『いのりのり』のサブカル成長記録

いのりのりのサブカル成長記録

豪州在住の日本人大学生が色々な趣味に取り組む

レイモンド・ローウィとインダストリアル・デザイン

どうも、のりです。

 

2018年7月18日、トランプ大統領が大統領専用機であるエアフォースワンのデザインを変更すると発表しました。

 

ベビーブルーと白を基調としたあの飛行機を、皆さんも一度は写真で見たことがあると思います。

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^これ

 

エアフォースワンは元々「口紅から機関車まで」で知られる20世紀アメリカを代表するデザイナーのレイモンド・ローウィによってデザインされました。

その後あの独特な色が世間で定着したため、機体が変わるごとに細々とした変更が加えられつつ現在まで使われてきました。

 

レイモンド・ローウィといえば私が大学で学ぶインダストリアル・デザインの父と呼ばれた人物です。

あのコカ・コーラのロゴや煙草のラッキーストライクのパッケージなどを手がけ、誇張でも何でもなく、彼のデザインは20世紀アメリカの象徴となりました。

 

デザインの商業的な価値を初めて証明したのも彼です。デザインが芸術から切り離されると同時に、デザインは消費期限のある消耗品となりました。

なので仕方ないのでしょうが、やはり彼を尊敬する我々インダストリアル・デザイナーとしては段々とローウィが忘れ去られていくようで悲しいです。

 

彼がどんな人物か興味を持った方は是非調べてみてください。戦後日本の煙草「ピース」のパッケージデザイン秘話とかちょっとウルっときます。

 

 

ローウィの人生から学ぶ、デザインと芸術の違い

 

 

インダストリアル・デザインとはその名の通り、工業製品に特化したデザインの事です。

「工業」という名が示す通り、基本的に工業に関係することであればグラフィック系からメカニカル系まで幅広くこなす必要があります。

 

ではなぜ「デザイン」と一緒くたにせず、わざわざ系統分けするのかと言われれば、インダストリアル・デザインが他の系統よりも商業的な意味合いが強いからでしょう。逆に、デザイン系の中で最も芸術から遠い存在と言えます。

これにはインダストリアル・デザインを確立したレイモンド・ローウィの人生を振り返るとよくわかります。

 

 

ローウィは1893年にフランスのパリで生まれました。

 

第一次世界大戦フランス軍兵士として従軍し、戦後すぐにアメリカン・ドリーム真っ只中のアメリカへと一人旅立ちます。

アメリカに着いたローウィはすぐにイラストレータとしての才能を開花させ、ヴォーグやハーパースバザーなど、多数の有名なファッション関係の会社から仕事を受け持つようになりました。

 

1920年代、アメリカの広告産業に革命が起きます。それまで広告といえば商品の特徴を並べるだけのつまらない物でしたが、客の心理的な欲求や恐れの重要性に気づき始めたのです。

全く同じ医薬製品でも、〇〇という物質が作用し、XXという器官に......と長々と説明されるのと、死への恐怖心を刺激されたあとに「でもこれを買えば大丈夫!」と言われるの、どちらが売れるかは、今となっては明白ですよね。

ローウィはこれをデザインにも活かせないか考えました。

 

1929年のウォール街大暴落後、工業は様々な機械を導入して失業者を減らし、経済の安定化を図りました。

ファッション・イラストレーターとしてだけでは満足できなかったローウィは様々な会社に機械のデザインをさせてほしいと頼み込みましたが、一様に鼻で笑われたそうです。

当時の人たちにとって、工業製品のデザインには「芸術家のお遊び」くらいの感覚しかなかったからです。

唯一彼を受け入れたのが複写機を製造していたゲシュテットナー社でした。

それまでむき出しだった複写機に機能的なデザインのカバーを取り付けたことで評判になり、世界恐慌の中ゲシュテットナー社製複写機は大成功を収めました

 

同時に工業製品のデザインの重要性が見直されました。インダストリアル・デザインの始まりは、芸術ではなくビジネスだったということです。

 

確かに芸術の国で生まれ、何年も芸術性が問われる仕事をしていた彼の作品はどれも芸術的と呼べるモノでしたが、彼の考えや行動は真逆であり「どうすれば客が買うか」の一点でした。 

 

その後もレイモンド・ローウィは客の心理的欲求を捉えたユーザー・ファーストな工業製品を次々デザインし、「彼のデザインしたものは必ず売れる」とまでいわれ、インダストリアル・デザインの父と呼ばれるまでになりました。

 

客にとっては性能の差なんて大してわかりません。故に人間は外見で判断しようとするのです。

イケメンや美女がモテるのと一緒ですね。つまり「外見なんて関係無い!」という人が本当にこんなに大勢いたらインダストリアル・デザイナーなんて存在してないんですよ!(極論

 

 

さいごに

 

 

こうして消費者を一番に考えたおかげでインダストリアル・デザインは芸術の枠を飛び出でて新たな分野として確立しましたが、芸術家とインダストリアル・デザイナーの最大の違いはどこで満足感を得るかでしょう。

 

芸術家と呼ばれる人達は自分の作品に誇りを持っています。どんなに売れなくても、評価されなくても、自分が芸術だと思えばそれは立派な芸術だからです。

対して今のインダストリアル・デザイナーは客(インハウスデザイナーの場合は会社)が一番で、デザイナー本人のデザインに対する気持ちなんて全く関係ありません。

 

売れなければゴミです。

 

でも売れればめちゃくちゃ嬉しい。売れるかも、評価されるかもわからずにビクビクしながら考えたデザインが何かに貢献したり、人に使って貰えることの喜びはきっと芸術家は味わえません。

 

この記事を読んで、少しでもインダストリアル・デザインに関心を持ってくれたなら嬉しいです。

 

それでは~

 

 

参考:

20世紀デザインの旗手 レイモンド・ローウィ

たばこと塩の博物館 開館25周年・リニューアル記念特別展図録寄稿文

逢坂成蹊大学情報デザイン研究室教授・嶋高宏

https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180719171725.pdf?id=ART0009504817

boutique.arte.tv

 

 

2018年7月19日  いのり のり